モンゴルと各国の広報比較
経済学部4年 室田夏陽
以前日本人学生625人に対し行ったモンゴル印象調査ではコロナ収束後の海外旅行を希望する割合が88.2%と大半数を占めているにも関わらず、モンゴルへ旅行したいと答える学生は全体の1/4も満たない結果となった。中でも日本人学生の多くはモンゴルがどんな国であり、何があるのかを認知できていない、という理由が目立った。
日本人がモンゴルを認知していない原因としてモンゴルの自国アピール不足が原因と考えられる。そこでソーシャルメディア面におけるアピールについてモンゴルと比較的規模が近いカンボジアとミャンマーの二国と比較した。
Mongolia
2019年国際観光客到着数 577,300人
2019年国際観光収入 60500万ドル
2019年モンゴル総人口 3297万人
(参照: Mongolia | Economic Indicators, Historic Data & Forecasts | CEIC (ceicdata.com))
〇HP
https://www.visitmongolia.com/index.html
モンゴル観光局からライセンスを取得したモンゴルツアー会社のHP。
HP では中国語簡体字と英語の 2 言語から選択可能出来るが、それぞれの言語のHPでつくりが少し違う。
英語版HP
英語の HP では上記の写真が左から順に表示される。全ての画像にマルコポーロの言葉が書いてあるが、なぜマルコポーロの言葉を書いてある のかの説明はない。
HP を下に読み進めていくと上記の様に 6 種類のツアーを選択可能 6 種類それぞれのツアーのページがあり、CLASSIC が 12, ADVENTURE が 7, LUXURY が 3, CULTURAL が 11, SHORT が 4, GROUP が 15 の合計 52 種類のツアーを展開 気になるツアーを選択するとその詳細のページとなる 。
左:旅行パック 右:それぞれの旅行パック詳細
最後にイメージとして写真を5枚程度挙げているが、どこのどんな宿泊施設に泊まるのか、食事はどこでどういったものを食べるのかは分からない。一方で移動手段の情報欄にはどこの国を産地とする車で移動するかといった事まで説明してくれている上、52 種類のツアーは行きたい場所からも検索も可能。
中心地と東西南北の5つに分類され選択したエリアのツアー並び観光地が表示される。
モンゴルの気温や地理などの基本情報もHPには掲載され、中でもビザ情報に関しては別にページを設け必要書類・手順など詳しく記載している。ビザ免除国についても滞在許可期間、利用可能パスポートなど国ごとに表記してくれている。
このサイトからツアーオンライン予約・決済も可能である。
中国版HP
両言語においてマルチウィンドウ非対応(右図)。
〇SNS
FacebookとTwitterのリンクが HP に貼られているが、Twitter のアカウントにはとべない 恐らく Facebook の1つのアカウントのみである。
自らが情報を発信するアカウントというよりは写真家などが撮ったモンゴルの風景をリツイートしている。
Cambodia
2019年国際観光客到着数 472,952人
2019年国際観光収入 4919万ドル
2019年カンボジア総人口 1555万2211人万人
(参照:Cambodia | Economic Indicators, Historic Data & Forecasts | CEIC (ceicdata.com))
〇HP
The Official Site for Tourism of Cambodia (tourismcambodia.com)
幅広い情報を観覧できるが、ホームでは検索機能を可能とする。
ツアー、宿泊施設、飛行機、バス、ボートの5項目をそれぞれ検索でき、
ツアー検索ではHPが提案するツアーを何日間楽しむかを選択した後それぞれ該当パックが表示される。
コースは19種類に分類されているがコースによっては開催していないものもある。(現段階:15種類)
宿泊施設検索では宿泊先やチェック日を選択するとbooking.comやagodaといった専門サイトへとぶ。
上図:HPが展開しているコーススタイル
移動手段検索においても専門サイトにとぶ為、観光客が比較的使い慣れた媒体で予約が可能となりやりやすくなる。
ホームの検索だけからではなく、多様な項目からも多様なものを発見が可能であり、現地でやりたい事・観光地・街名などからもツアー詳細以外の情報を手にいれる事ができる。やりたい事ではカンボジアで出来る・見れる項目から気になるものを選択すると、簡単な説明と共に該当する観光地、それをカバーするコースが提示される。
カンボジアに関する基礎情報も入国に関する重要情報、通貨気候など入国後に必要になる情報、一年を通したカンボジアのイベントスケジュールなど細かくまとめている。
写真が効果的に活用されている為どの写真をクリックすればどの情報が獲得できるかといった事が分かりやすい。
〇SNS
Facebook, Twitter, Instagramの3つを運営している
Facebookにおいては2万人を超えるフォロワーを持ち、日々カンボジアの魅力やニュースを発信している事に加え、ツアーのパック販売をここでも行っている。
TwitterではHPにアップした最近のカンボジアニュースの記事などを主にシェアしている。
HPにYouTubeのアイコンも貼ってあるが、リンクは存在しない。
Instagramでは魅力的なカンボジアの写真をハッシュタグや位置情報を活用し発信している。フォロワーも1400人以上有しハイライト機能も活用している為、フォローしていない層にも魅力をいつでもアピールできる。
Myanmar
2019年国際観光客到着数 90,3000人
2019年国際観光収入 2818753ドル
2019年ミャンマー総人口 54045万人
(参照:Myanmar | Economic Indicators, Historic Data & Forecasts | CEIC (ceicdata.com))
〇HP
Ministry of Hotels & Tourism Myanmar
HPは英語に加えミャンマー、中国、韓国、ロシア、ベルギー、フランス、スペイン、タイ、ベトナム、日本の11か国語から選択でき、英語のHPにはCovid-19関連の情報がまとめられてある。
英語以外の言語では以下のように都市毎のユニークな写真が順に表示され、そこから都市のページにとべる。英語HPはCovid-19情報の後に続く
↑Covid-19情報を掲載するHP ↑都市毎の写真が順に表示される
天気や月によるおすすめコースも提供している上、それぞれの魅力もコンパクトにまとめている。
ローカルな食べ物やアクティビティも写真と共にま
↑天気や月毎のおすすめ ↑ローカルなアクティビティまとめ
宿泊用ホテルの連絡先(34つ)を都市毎に記載し、外国訪問者用のホテルはCovid-19関係情報のページにまとめてある。
HPから予約はできないが、ツアー、ガイド、熱気球など全て扱う企業の詳細をホテルの様に掲載している為、そこから予約が可能。
他にも36つのガイドブックもフリーでダウンロードでき、様々な分野・言語のガイドブックを入手できる。日本語のガイドブックは80ページを超える大容量。
写真をふんだんに活用したり、ミャンマーで使える簡単な挨拶がHPにあしらってあったりと、ミャンマーをより身近に感じやすくイメージが湧きやすい。
〇SNS
InstagramとFacebookを活用している。YouTubeもHPに貼ってはいるがリンクは存在しない。Facebookは主にミャンマー語でミャンマーの出来事をシェアしている一方でInstagramでは魅力的な写真を英語で紹介している。ハイライト機能などは活用していないが、ハッシュタグは1つの投稿につきいくつも活用している。
三国比較を踏まえて
WORLD ECONOMIC FORUM が世界観光機関(UNWTO)と世界旅行ツーリズム協議
会(WTTC)の二社の2019年版データによると“Country brand strategy rating”の項目から明らかなようにモンゴルのブランド力は世界的にみても高い。モンゴルには沢山の魅力で溢れているのだ。しかし、“International Openness”の数値からもわかるようにモンゴルの国際的な開放性が低い為その魅力に気づいてもらえていない現状にある。ミャンマーやカンボジアと比較してもモンゴルの伸びしろが大きい事は明白である。
(参考:World Economic Forum (weforum.org))
観光客が渡航を決めるまでには「認知」「比較」の2ステップを踏む。モンゴルはこの1stステップである「認知」の段階で課題がある。「認知」の段階でのブランディングは問題ない。そのブランディングされたものをもっとインターネットを活用し、認知する事が最重要事項である。
Instagram、Facebook、YouTubeをもっと活用し、ソーシャルメディアでモンゴルへの気づきを与え、HPへ観光客を誘う事に強く意識を置くべきである。また、HPを始めインターネット上にあるモンゴルの情報が少なすぎる事も改善すべきである。鮮やかで大きな写真や動画で見る人が容易にモンゴルでの観光をイメージしやすい環境を整え、宿泊施設の設備や環境の詳細もしっかり表記し、セキュリティ面でも問題ない事をアピールしなくてはならない。
モンゴルにおいて
① ソーシャルメディアをさらに活用し観光客への認識の場を提供すること
② 前段階で得た認識を渡航決断の段階に持ち込めるHPの制作
以上の二点が改善策に値すると考える。