モンゴルをはじめ外国での人材育成のマネジメントとは?

国会議事堂の前での大川様

大川様の簡単なご経歴

・北海道小樽市出身

・1984年に中央大学法学部卒業後、北海道庁に入庁

・1993年JICAに転職

・2015年7月からモンゴル日本センターに赴任

・2021年8月からラオス日本センターに赴任。現在、ラオス・ビエンチャン在


  • 大川様が国際協力のお仕事に興味を持たれた(お仕事をされることとなった)きっかけを教えて頂きたいです。

きっかけとしては、北海道庁時代に国内の大学院に派遣されていた際です。大学院では、ASEANからの留学生と研究や交流をする機会が多くありました。多国籍な学生と関わることで、一言でいえば「世界は広いな」と実感しました。この思いがより広い、「世界」というフィールドで働いてみたいという希望に繋がりました。大学院を修了し、北海道庁に戻って3年が経過したころ、JICAの社会人採用の募集広告を見つけ、軽い気持ちで応募したところ、意外にも合格し、転職を決めました。

当時は既に33歳で、妻も息子もおり、北海道庁でも良いコースを歩んでいたので、転職するか否か迷いましたが「世界を見てみたい」という希望が強かったですね。

  • 大川様がモンゴルでお仕事されていた際に苦労した、困難であった出来事はございますか。

まず、モンゴルでの私の仕事ですが、モンゴル日本センターの経営を支援することです。

日本センターは2000年初めに日本政府のイニシアティブの下、モンゴルも含め、旧社会主義経済圏の9か国に設置されたものです。日本センターの役割は大きく分けて二つあります。一つ目はビジネス人材の育成です。相手国の計画経済から市場経済への移行を支援し、産業振興を図るため、主に中小企業を対象に各種ビジネス研修を実施しています。二つ目は日本の紹介です。日本語教育を普及し、日本文化を紹介することで、相手国における日本の知名度を高める活動をしています。現在、日本センターの経営は相手国機関、モンゴルであればモンゴル国立大学に移管されていますが、JICAと国際交流基金がその支援をしています。

モンゴル日本センターに赴任した当初はとても苦労しましたね。簡単に言えば職員のモチベーションが低かったからです。日本センターの運営の主体がJICAから相手国政府に移管されたことで、給与水準が半分程度まで減ってしまい、この変化が職員のモチベーションに対して大きな影響を与える主要因になっていました。

問題の解決には職員の給料を上げるしかない訳です。しかし、センターの収入が無ければ給料を上げることは出来ない。そこで私は収入を上げる為の4年の中期事業改善計画を立案し、職員に提案し、皆で頑張っていこうと職員に呼び掛けました。初めはごく少数の職員の理解しか得ることが出来ませんでしたが、1年間、計画通り行うことでセンター収入も増加し、職員の給与も1割程度増加させることができました。すると次第に職員のモチベーションも向上してきました。計画終了時の2019年まで、センター収入は毎年増収、職員給与も毎年アップすることができ、職員も新しいことに前向き・積極的に取り組むようになりました。

  • 大川様の感じられたモンゴルの魅力は何でしょうか。

「人の優秀さ」ですね。流石モンゴル帝国を築いた民族だけあって非常に優秀であると感じます。具体的にどう優秀なのかと言いますと、いろいろな見方があると思いますが、私は「相手の指示をきちんと理解し実行できる、さらに、自分のアイデアで改善を加えて仕事をすることもできる点」だと思います。簡単なように思えるかもしれませんが、日本でも若い人はなかなか、これができません。モンゴルの人は「勉強が好き」という面も非常に感じます。センターの職員の中で夜間の大学院へ通っている人もいるなど、モンゴル人の勤勉さを感じる機会が多いですね。

あくまで私見ですが、その理由として「冬の寒さ」も関係しているのではないかと思います。モンゴルの寒さは厳しい。真冬は11月から2月まで続きます。最高気温がマイナス20℃といった日が日常といったレベルでの厳しさです(注:最低ではなく、最高気温です)。その冬を毎年乗り越えるには「知恵と体力」が必要となる。そうした知恵と体力を兼ね備えた人材が代々生き残ってきた結果が、モンゴルの人の優秀さに繋がっていると感じます。

秋のモンゴルの大草原
  • 大川様のモンゴルでのおすすめの観光地はどこでしょうか。

モンゴルでは「大草原と壮大な星空」をお勧めしたいですね。ウランバートル近郊でも大草原が広がっています。これを見るだけでも非常に感動する経験ができると思います。1993年にJICAに転職して、初出張先がモンゴルで、その時、大草原の雄大さに、心を奪われました。2015年にモンゴル赴任の打診があった際は「もう一度あの雄大な大草原を見たい」と思い、受けました。美しい星空については、快晴の大草原の夜をお勧めします。大草原の周りは灯りが無いため星空がくっきり、はっきり見えます。大草原と星空を見るだけでも、モンゴルへ行くお金を払う価値はあると思う、それ程、雄大で美しいです。

  • モンゴルの観光地の課題

モンゴルの観光地の食べ物がどこへ行っても同じ点が課題かな。日本では観光地ごとの食に触れることも旅行の楽しみの一つだと思います。モンゴルで食べる食事はどこに行っても同じでバリエーションが無いのは残念であると思います。

なお、おすすめの料理はホルホグです。羊肉の塊を焼いた石で蒸して塩で味付けしただけの料理ですが、豪快で羊肉の美味しさが味わえる、大草原にぴったりの料理です。是非皆さんに食べてもらいたいですね。

  • 大川様のこれから取り組みたい事、目標を教えて頂きたいです。

ラオス日本センターの活動を、ラオス、日本側の要望に応えられるように、より活発化させることです。ラオスでの活動は始まったばかりで、かつ、コロナのロックダウン下ですが、これから、職員・日本人専門家とともに考え、関係機関と連携して、その体制を着実に構築していきたいと考えています。


大川様のご経歴

・北海道小樽市出身 

・1984年に中央大学法学部卒業後、北海道庁に入庁。市町村運営指導(4年)、法務業務(3年)に携わり、加えて国内の大学院で政策分析を研修(2年)。

・1993年JICAに転職。企画・評価業務(5年)、海外勤務(タイ3年、ラオス3年)、法務業務(6年)、国内機関経営(4年)を経て2015年7月からモンゴル日本センターに赴任し、経営支援を担当(5年)。帰国後、更に2021年8月からラオス日本センターに赴任。現在、ラオス・ビエンチャン在。


最後に

 インタビューを通じ大川様のお仕事に対する強い熱意というものを非常に感じることが出来ました。たとえ厳しい状況であっても、周りの職員の方を巻き込み目標達成までお仕事に取り組まれる姿勢は大変勉強になりました。また、こちらの分かりにくい質問に対しても質問の意図を汲み取って下さり分かりやすくお話をしてくださり内容のあるインタビューとすることが出来ました。最後になりますが、大変お忙しい中快くインタビューを快諾して頂いた大川様にこの場を借りてお礼申し上げます。