取材日:2021年10月12日
取材対象:株式会社Mihachi CEO衣袋智子様(以下 衣袋CEO)
記事作成者:町田
衣袋CEOのご紹介
宮崎県出身。早稲田大学文学部卒業。大学卒業後、モンゴルにて日本のテレビ局のコーディネーターを務め、番組制作に携わる。その他に、コメンテーターなど様々な職業をご経験されている。2014年より養蜂業を始め、現在は株式会社MihachiのCEOとしてご活躍中。
取材趣旨
筆者は、当ゼミの教授から「モンゴルで養蜂業をしている日本人がいる」と聞いたことがきっかけで衣袋CEOのことを知りました。そこで「なぜモンゴルをビジネスの舞台に選ばれたのか?」「なぜ養蜂業を始めたのか?」という素朴な疑問が生まれ、是非お話をお伺いしたいと思い取材機会を設けていただきました。
今回の取材では(1)衣袋CEOとモンゴルの出会い(2)モンゴルでビジネスをする中での難しさ(3)おすすめの観光地 をテーマに取材をしてきました!
衣袋CEOとモンゴルの出会い
筆者は、取材する前に「モンゴルで起業をするくらいだから、幼少期の頃から何かのきっかけでモンゴルへの関心があったのかな」と思っていました。しかし、実際は異なるもので大変驚きました。
衣袋CEOとモンゴルの出会いは早稲田大学2年時の学科選択でモンゴル史を専攻した時でした。しかし、モンゴル史を勉強したかったから選択したわけではなく「消去法」で選んだと言います。というのも、1年時にそれほど勉強に集中していなかったこともあり、当時の成績で選考できる分野が哲学、アジア史のどちらかしか無かったと言います。哲学は小難しそうだと思いアジア史を選択します。アジア史の中では、西アジアや東南アジアも選択肢にはあったが、これらを専攻する場合はヨーロッパ言語の取得が必須だったと言います。「そんなに勉強に労力を割きたくないな」と思い、最終的にモンゴル史を選択されたそうです。
筆者はこれを聞いて、ポジティブな意思決定で選んだわけではないモンゴルですが、現在はそのモンゴルを舞台に起業されているので、人生とは分からないものだなと感じさせられました。
衣袋CEOがモンゴルで株式会社Mihachiを起業するまで
先ほど記載した通り、衣袋CEOは大学2年時にモンゴルと出会いました。
そんな衣袋CEOが初めてモンゴルに訪れたのは大学4年時。当時所属していたゼミの教授から「卒論を書くためにモンゴルに行って来い!」と言われ、渋々モンゴルに行くことがきまったそうです。そんな気乗りしないまま、モンゴルに行った訳ですが、いざ降り立つとモンゴルに魅了されたと言います。当時のモンゴルは東京と比べると人や車が少なく住みやすかったと言います。また、ちょうど社会主義から民主化が進んでいた過程で、あまり体験できないようなことを生活の隅々で感じることが出来たと言います。更に今まで見たことのない街の風景や雰囲気を体感できたと言います。
筆者も初めてモンゴルに行った時は、想像以上に発展した街や日本では見ることのできない大自然を体感し、モンゴルに魅了されたことを覚えています。
モンゴルに魅了された衣袋CEOは大学卒業後すぐにモンゴルに渡り、日本の番組制作などに携わりました。その仕事の中で「モンゴルの養蜂業」をテーマにした番組制作をする機会がありました。これが衣袋CEOと養蜂業との出会いになります。仕事でモンゴルの養蜂業と関わる中で、養蜂業について無知ながらも「モンゴルの養蜂業はビジネスとして確立されていない」と感じたようです。その頃になると衣袋CEOはモンゴルの生活にも慣れていて、漠然とではあるが「何か大きなことに挑戦したい!」と思っていたこともあり、モンゴルで養蜂業をすれば勝てると考え株式会社Mihachiを起業しました。
・衣袋CEOが語る養蜂業の面白さと夢
衣袋CEOは、一からハチミツについて勉強する中で「ミツバチの生物としての面白さ」に気づいたそうです。ミツバチは女王バチ・働きバチ・雄バチから成り立ち、それぞれが与えられた役割を全うするそうです。また、ミツバチたちは「ダンス」を通して意思疎通を行い、組織として動きます。このような小さな生物ながらも組織的に動いているミツバチに興味が湧いたそうです。
(▼ミツバチについて詳しく知りたい方はこちらのサイトがオススメです
http://www.tamagawa.ac.jp/hsrc/contents/pages/note/bee-caste.htm)
そして、養蜂業について知見を高めていくに連れ、衣袋CEOは大きな夢を持つようになりました。それは「モンゴルで生産されたハチミツを世界中の人の食べてもらう」という夢です。ハチミツを作るためにミツバチは花から花へと蜜を集め、それを巣の中に持ち帰ります。次に、巣の中のミツバチがリレーのようにミツバチからミツバチへとハチミツを渡し、最後には蜜房に貯蔵されます。そして、最終的には人間の手によって世界中にミツバチを届ける。このミツバチと人間の協働作業により、モンゴルで生産されたハチミツを世界中に届けるというファンタジーな世界観が素敵で、それを実現したいと衣袋CEOは考えています。
・モンゴルでビジネスをする苦悩
「マクロ的な要因」と「賄賂を求められること」が難しいと語る。
―マクロ的な要因について
衣袋CEOは製品の質を高めたり、HACCP認証を得たりと夢の実現に向けて奔走しているため、製品自体は海外で勝負できるだけのものを生産出来ていると言います。一方で、マクロ的な要因でその実現ができていないと肩を落とします。というのも、ハチミツを輸出するためには輸出先の国がモンゴルのハチミツを輸入リストに登録しないといけないのですが、多くの国が輸入リスト➖例えば、中国の場合を例に出してみます。中国は食品を輸入する際にHACCP認証の義務付けをしています。(株式会社Mihachiはきちんとこの認証を得ている)次の関門として、モンゴルのハチミツを輸入リストに登録している必要があります。しかし、中国はモンゴルハチミツを輸入リストに登録していないので、株式会社Mihachiがたとえ製品の基準を満たしていても輸出できないという現状があります。続いて、日本の例も挙げてみます。日本の場合は、ハチミツを輸入するにあたって糖分析を必要としています。(糖分析とは、簡潔に言うとハチミツの成分が砂糖などを混ぜずに本当に純粋なハチミツかどうか検証する分析のこと)モンゴルには、糖分析をする機関が2,3あるものの、日本の厚生労働省がこれらの機関を公式として認めていないと言います。そのため、株式会社Mihachiが生産するハチミツは純度の高いものではあるのですが、日本での再検査などコスト的な負担が大きくなり、価格的な競争力が落ちてしまいます。このように、たとえ製品が基準を満たしても、高品質でもマクロ的な要因で他国に輸出できないというのが現状だと言います。マクロ的な要因で輸出できないという状況は、発展途上国であるモンゴルならではの悩みなのかなと筆者は思いました。実際に、衣袋CEOはもしもビジネスの舞台をやり直せるならモンゴルは選ばないかもと笑いながら答えていたのが印象的でした。しかし、衣袋CEOはこんな状況でもへこたれずに前を向いています。JAICAやモンゴルの農牧省(日本で言う農林水産省)と協力をして、この状況を打破すべく活動されています。衣袋CEOは今までも幾度とない困難を乗り越えてきたため、このマクロ的な課題も解決するだろうと筆者は取材をしていて思いました。
―賄賂について
賄賂に関しては、モンゴルの文化的な部分で根付いているので仕方ないとは思うと衣袋CEOは語ります。しかし、衣袋CEOは「賄賂を絶対にやりたくない!」という信念からSNS活動に熱心に取り組んでいます。twitterや公式HPなどのSNSを通して、仕事でのいい出来事・悪い出来事含めて包み隠さず情報を公開しています。この活動もありtwitterのフォロワーは3万人を超えています。(モンゴル国内の人口が約300万人なので、日本で言うところのフォロワー100万人と同じようなことです!すごい!)この活動により、多くの人から見られている環境(=賄賂をできない環境作り)を自ら積極的にしました。その結果、賄賂を持ちかけようとする相手もSNSで発信されたら困るため衣袋CEOのところに来なくなったと言います。
・おすすめの観光地
セレンゲ県がオススメ!
衣袋CEOはモンゴルのすべての県に行ったことがあるわけではないため、訪れたことがある場所の中からオススメをするとセレンゲ県だそうです。ロシアとの国境近くに位置し、そこにはモンゴルで初めて建設された学校があったり、社会主義革命が起きた時に、モンゴルとロシアがやり取りを行った場所があったりします。他にも歴史的な建物や博物館、抑留されていた日本人墓地などもあります。このような歴史的な建造物がある一方、壮観な森林、物見やぐらから見ることのできる月や星空などの大自然も一興だと言います。日本では体験することのできない「非日常感」を体験できる素晴らしいスポットですね。さらに、ロシアに隣接しているため、日帰りでモンゴルとロシアを行き来することができるらしいです。旅行好きの筆者からすると、一日で2か国行けるのはポイントがとても高いとです!最後に、セレンゲ県には株式会社Mihachiが養蜂場と瓶詰め工場を構えています。セレンゲ県に訪れた際はこの絶品なハチミツを是非堪能したいところですね。
▼株式会社Mihachi公式HP
▼SNS紹介
Twitter @TomokoIbukuro
Youtube: https://youtube.com/channel/UCMkWn11-g1KnTNm8in5o9vg