『ホームページから行う日本とモンゴルの大手飲料メーカーにおける企業比較』・『モンゴル資源と日本企業』

国際経営学部 田島由唯

  • 研究の目的

私は前期に『ホームページから行う日本とモンゴルの大手飲料メーカーにおける企業比較』、後期に『モンゴル資源と日本企業』についての研究を行った。私は国際経営学部に在籍している。学部での学びをゼミ活動にも繋げたいと考え、企業と関連のあるテーマで研究を行った。そして今年度は、新型コロナウイルスの影響で現地調査に行くことができなかった。このような現状の中で、前期は両国の企業における違いや共通点を比較したく、ホームページにおいて読み取れる特色を企業理念と商品に着目して比較を行った。後期は、日・モンゴル経済連携協定ができたことで、日本人がモンゴルで起業がしやすくなったという背景から、モンゴルにて資源を有効活用している日本人が起業した会社について、自分が経営者だとしたらどのような分野でモンゴルにて経営していくのかを考えた。さらに、モンゴル国立大学の生徒さんとの交流も行った。

  • 前期『ホームページから行う日本とモンゴルの大手飲料メーカーにおける企業比較』

(1)序論

日本とモンゴルの成功企業にはホームページから読み取れる特色があるのではと思い、企業理念と商品に着目して比較を行った。対象企業は、ビールをはじめとしたアルコール類からソフトドリンク、粉ミルク・ベビーフード、菓子・健康サポート、フリーズドライ等と幅広い分野の商品を提供している日本人なら誰でも知っている大手飲料メーカーであるアサヒグループとアルコールが有名でありソフトドリンク、乳製品、輸入製品と様々な商品を取り扱うモンゴルの大手飲料メーカーAPU Company である。

(2)企業理念からの比較

アサヒグループのグループ理念には4種類の項目がある。1つ目の社会における使命・存在価値では「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」。2つ目のアサヒグループのありたい姿・目指す姿では「高付加価値ブランドを核として成長する“グローカルな価値創造企業”を目指す」。3つ目のミッションを果たし、ビジョンを実現するための価値観では「挑戦と革新 最高の品質 感動の共有」、最後の項目であるステークホルダーへの行動指針・約束では「すべてのステークホルダーとの競争による企業価値向上 顧客:期待を超える商品・サービスによるお客様満足の追求 社員:会社と個人の成長を両立する企業風土の醸成 社会:事業を通じた持続可能な社会への貢献 取引先:双方の価値向上に繋がる共創関係の構築 株主:持続的利益成長と株主還元による株式の向上」である。一方でAPU Companyは「社会的義務と責任を熱心に遂行し、環境にやさしい生産を運営し、持続可能な経済開発の構築に向けて取り組む」としており、そこから更に3項目に分かれている。「絶対の:受託者の義務と責任」「ピュア:倫理的な行動と環境への配慮」そして「ユニーク:製品 文化 信念」である。このように両社とも細かく企業理念を定めることで社員が一致団結し目標達成に向かうことに繋がり現在のような大手企業への成功の要因である。これは日本の楽天株式会社や中国のアリババ株式会社も同様である。アサヒグループはホームページにて経営理念はもちろん経営方針まで動画や数値などでわかりやすく掲載されていたがAPUは Companyは課題、価値、ビジョンと3つの特設ページにて書かれているがデザインを重視している印象で正直文章は読みにくいと感じた。

(3)商品からの比較

両社のホームページのビール欄トップにくる商品二つの比較を行う。アサヒグループはアサヒスーパードライである。スーパードライは1987年に日本初の「辛口」ビールとして発売された。APU CompanyはKaltenberg Hefeweissbierである。Kaltenberg Hefeweissbierは最近リリースされた新商品である。この商品の特徴は地元で初めて瓶詰だれた小麦ビールであるという点だ。アサヒグループは昔からの人気商品をトップに掲載しているのに対してAPU Companyは最新商品を掲載している点から両社のホームページから商品販売に対する相違点がうかがえる。

アサヒグループはアサヒスーパードライについての特設ページ、さらに20以上もの詳細ページを設けている。VR工場見学やTVCM、おいしいビールの注ぎ方、商品情報などとユニークなホームページとなっている。そのなかの一つにあるスーパードライのこだわりからはアサヒスーパードライのうまさの原点である酵母、原材料、製法についての説明が記されている。一方で、APU CompanyでもKaltenberg Hefeweissbierについての特設ページが掲載されている。そこには、醸造方法、香り、商品情報が完結にわかりやすく記されている。アサヒグループは情報が多く必要な情報を得るのに時間は要するが詳細まで知ることができる。APU Companyは情報が簡潔にまとまっているため必要な情報を簡単に知ることができる。

(4)結論

アサヒグループのホームページは様々な情報が詳細に記載されており企業情報、企業理念、商品と今回着目している点はもちろんであるが、そのほかにキャンペーンやエンタメ・レシピにおいても多くの情報を得ることができる。これは、アサヒグループだけではなく、日本大手飲料メーカーであるキリンホールディングスやサントリーも同様であった。これは日本人のおもてなし精神同様であると感じた。APU Companyのホームページは全体的に簡潔にまとまっておりわかりやすい反面ホームページから詳細を得ることは難しかった。同じくモンゴルの大手飲料メーカーであるVITAFIT GROUP LLCやGem International LLCもAPU Companyと類似したホームページ構成であった。これらより、ホームページ構成はそれぞれの国の人間性が出ているといえるだろう。そのほかにも、APU Companyはモンゴルで圧倒的シェア率を誇る飲料メーカーであるため、ホームページにて宣伝しなくてもファンはついている。しかし、アサヒビールにおいてはキリンホールディングスやサントリーなど競争相手が多くファンを定着させる必要がある。このような背景から日本のホームページからは情報が多く取れるといえるだろう。

  • 後期『モンゴル資源と日本企業』

(1)序論

2016年6月7日に日本とモンゴルの間で日・モンゴル経済連携協定(EPA)が発足された。これにより発効後即時に両国の往復貿易額の約50%の関税が撤廃される。関税がなくなることで、進出国における価格競争が激しくなるため、小規模な企業・事業であっても自社商品の海外展開が可能になる。そして、私自身が国際学部に在籍し経済学や経営学を学ぶ中で起業という分野に興味をもったこともありモンゴルにて企業された日本企業を調査することで、モンゴルと日本を繋げ社会に貢献できる方法が見つけられるのではないかと思った。

(2)日・モンゴル経済連携協定

日・モンゴル経済連携協定(EPA)は2016年(平成28年)6月7日に発効された。この意義としては、民主化・市場経済化し、今後も中長期的な高成長が見込まれるモンゴルの経済成長を日本の経済成長に取り込むこと。モンゴルからのエネルギー・鉱物資源の安定供給に寄与すること。貿易の拡大やエネルギー・鉱物資源分野等における投資環境の改善を通じて、モンゴルとの「戦略的パートナーシップ」を一層強化すること。などが挙げられる。 日本との経済連携協定はモンゴルにとって初めての自由貿易協定(FTA)である。経済連携協定において、発効前の無税輸出の割合は総輸出額の1%未満だったが、発効後即時に両国の往復貿易額の約50%、発効後10年間で約96%の関税が撤廃される。モンゴル側は日本からの最大の輸入品目である中古車の輸入関税を10年かけて撤廃し、新車の関税率はただちに撤廃される。

(3)在モンゴル日本企業 HushTug

モンゴルで活躍する日本人起業家とその企業について調べていたところ「HushTug(ハッシュタグ)」というファッションブランドを見つけた。HushTugはラズホールディングス株式会社代表取締役の戸田貴久氏が運営するファッションブランドでありモンゴルの牛革を日本の技術を用いて高品質のバッグや財布に加工し輸出し販売している。HushTugは委託せず自社にて企画し、自社工場とモンゴルの提携工場で製造、そして販売を行っているため高品質のレザー製品を従来の半額以下で提供することが可能である。EPAの影響面からみてみると、HushTugがモンゴルで製作した本革バッグを日本へ輸出する際、ファスナーなど付随する部品の条件などで税率がその都度変わるが現状では6〜12%の関税がかかっている。これは現在の日本モンゴルEPAでは、加工前の皮であれば関税が1~2%で済むがが、加工後の本革バッグは8~10%かかる。加工前と加工後で税率が異なる理由を関係省庁に確認したが明確な回答を得ることはできなかった。

戸田氏はONLY STORYのインタビューにて「若者が頑張りたいと思えるような新しい産業を創ることでモンゴルを盛り上げる一手になりたい」と話していた。彼が移住していた当時、友達の奥さん5人中4人が流産し、モンゴルの世界最悪の大気汚染がその要因の一つだと知った。そしてそれは国が20年以上放置してきた問題であり改善しようという動きがない。それを知ったときに彼は、国が動かないなら、自分が困っている友達のために何かやりたいと思ったそうだ。このインタビューを読んで私はモンゴルと日本を繋げるだけではなく、モンゴルの人のために活動する戸田氏に尊敬の意を抱いた。来年度は戸田氏に直接話を聞く機会が得られたらと思う。

(4)ビジネスモデルの提案

私が、今回モンゴルの日本企業やモンゴル国立大学の生徒さんとの交流を通じて自分がモンゴルに起業するとしたらのビジネスモデルを考えた。それは、モンゴル人向けの健康食品やサプリメントの販売である。モンゴルでは、1990年代以降グローバル化や民主化などにより、人々が自由に移動可能になり情報の流入も活発化した。これに伴い、食事の形態にも変化が起きた。モンゴル人の死因の上位に生活慣習や食生活に起因する心血管系疾患が挙げられる。これは糖尿病、喫煙、高血圧、脂質異常症がリスクの重大要因である。そして、モンゴルでは肥満の人が多い。これらの予防に効果的な手段の一つとして、またモンゴル人が健康に関心を持つきっかけの一つとして健康食品やサプリメントをモンゴル人に提供したいと思った。アジア、特に親日国であるモンゴルでのメイドインジャパンのブランド人気は高いと考えられることから、モンゴルに企業を置き近年海外進出に積極的な姿勢をみせている日本企業から取り寄せ販売することでモンゴルの人々の手に取ってもらえると考える。これは、まだ机上の空論であるが大学卒業までにこの起業案を煮詰めていきたい。

  • 参考文献

1.APU Company公式ホームページ

2.Gem International LLC公式ホームページ

3.VITAFIT GROUP LLC公式ホームページ

4.アサヒグループ公式ホームページ

5.岩田伸人,(2016),『日本・モンゴルEPAの経緯と課題』,李刊 国際貿易と投資Summer 2016

6.大西夏奈子,(2019),平成生まれの起業家が挑むモンゴルレザー産業,Jargal Defacto

7.岸本紗也加,(2014),ウランバートルにおける食と人々の健康意識,GLOCOL ブックレット. 16 P.81-P.91

8.キリンホールディングス公式ホームページ

9.サントリー公式ホームページ

10.スケルトンワークス,(2019),モンゴルで作った高品質なレザーで世界を狙う,ONLY STORY