
浜島博章さんの経歴のご紹介
1990年4月 三菱商事㈱入社
2017年4月から2021年3月まで三菱商事㈱ウランバートル駐在事務所長
インタビューの目的
モンゴルへの経済協力のリサーチを進めていく上で、日本企業が参加している事業の中で国際空港を建設、運営を行っていることを知った。外国の空港建設はその国の会社が主体となって行うことが当然なことであると考えていたため、日本という外国の企業が行っていることに対して強い興味を持った。空港はモンゴルの経済発展は勿論のこと、観光開発において重要な施設になる。このことから、この事業の目的や意義を知ることでこれからの自分自身のモンゴルの観光開発の研究を深めることができると考え、インタビューをお願いした。
インタビューの内容
Q.コロナ禍でのモンゴルの生活について教えてください。
4月30日現在モンゴルはロックダウン中であり、車の移動なども制限されていました。基本的には在宅勤務が中心であり、街中では検問があるため出歩いても近所のスーパーに出かけるくらいでした。日本と比較してロックダウンへの国の動きが速いことも挙げられ1,2日のうちに決定されます。これは1992年まで続いていた社会主義体制の名残ともいえるかもしれないですね。
Q.浜島さんのモンゴル滞在で感じたモンゴルのすごいなと思うところはどのような点でしょうか?
一つ目は、日本に比べて政治に勢いがあり、若くエネルギーを感じることです。日本の閣僚と比べ、モンゴルの閣僚の年齢は若いです。日本の菅義偉内閣総理大臣が72歳なのに対し、モンゴルのオユーンエルデネ首相は40歳、バトトルガ大統領は57歳、国会議員の平均年齢は40代ととても若いです。国民は必ずしも政治家を信用しているわけではありませんが、今の政治家が不信ならば自分で変えようと立候補される方が私の身近におりました。残念ながら落選してしまいましたが、その行動力には敬服いたしました。
二つ目は、モンゴルが親日国である点です。モンゴル国内には日本のODAによって建設された陸橋、道路、大学病院などが存在しており、他国のODAによって建設されたものと比較し高品質であることから、日本に対する信頼も高く、日本に敬慕の情を持たれるかたにもたくさんお会いしました。このようなことは、単純に一人当たりGDPなど数字で分析できるものではないので、大切な肌感覚だと思っております。
三つ目は、多くのモンゴル人が自分のことは自ら解決し、自分たち自身で開発しようとする考え方を持っている点です。大企業に勤めるよりは、小さくても自分の会社を興す考えを持つ若者を多くみました。モンゴル人のルーツである遊牧民は厳しい自然を相手にいろいろなことを自分で処理せねばなりません。このモンゴル人の考え方の基本は遊牧民であることが由来しているのではないかと思います。半面、チームワークの作業は苦手なところがあり、日本人と姿形が似ているものの、気質は違うと思いました。
Q.モンゴルでビジネスを行う際心掛けていたことはございますか?
モンゴルで事業を行う以上、モンゴル国内の法律、慣習にきちんと基づいて行うことを意識していました。大型プロジェクトを進めるためにはモンゴル政府との密接なやり取りが重要とされますが、この際にも公正なやり取りを積み重ねることでモンゴルでの事業を展開していました。
Q.三菱商事さんがウランバートルに事業所を展開している意義は何でしょうか?
モンゴルには豊富な鉱物資源があること、インフラが不足していることから需要が見込まれること、生活産業関連でも新たなビジネス機会が考えられることなどから2010年に事務所を開所いたしました。ウランバートル事務所は現在もモンゴルの発展に寄与し、経済価値、社会価値、環境価値の三価値を同時に実現できるよう様々な産業分野で情報収集や市場開発を行っております。
Q.なぜ日本の企業が外国の空港建設に主体として参加しているのでしょうか?
まず初めに、モンゴルの空港運営を民営化する動きがみられました。モンゴルでは共産圏時代からずっと国営の空港であったため民間の力で空港を運営するためのノウハウが不足していました。そこでモンゴル政府が海外に運営を委託することとなり、運営ノウハウが豊富な日本の企業に決定されました。
Q.浜島さんのモンゴルでのおすすめの観光地はどこでしょうか?
観光の魅力は、自然、食、文化、歴史だと思いますが、モンゴルには圧倒的に手付かずの大自然が残されておりますので、自然に触れ合う観光がお勧めです。登山やアウトドアの旅に慣れている方ならば、少し準備は必要ですが、モンゴル西端に位置するタバンボグドの山々への登山の挑戦をお勧めします。また、中国との国境近くにあるシリーンボグド聖山は男性のみが登ることが許される丘陵ですが、ご来光を浴びることで大自然の良い「運気」が体内に入るといわれており、モンゴル人に人気があるスピリチュアルなところです。頂上に立つと360°地平線が望めるのですが、真東から太陽が刻一刻色調を変えながら上る姿を前に朝陽を浴びると、気持ちがリフレッシュされました。旅が苦手な方でも、首都ウランバートルから一時間ほど車で東に移動すると、テレルジがあります。上高地の河童橋を彷彿させる景観のなか、乗馬、ハイキング、ラフティング、バギーなどを楽しむことができますし、夜は満天の星空を眺めることもできます。テレルジには洋風の高級ホテルもモンゴルならではのテント式住居「ゲル」に宿泊することも可能です。知人家族を何組も連れて行きましたが皆、好評でした。これらの情報はあまりガイドブックに掲載されていないのが残念ですが、少しでもお役に立つことができればうれしいです。
浜島さんおすすめのモンゴル観光地と新ウランバートル国際空港(クリックするとGoogleマップのサイトに繋がります)
- 取材した感想
実際にモンゴルにおいて活躍されている日本の企業の方からお話を聞き、モンゴルで勤務されていたからこそ感じることのできた貴重な情報を得ることができたと思う。一つのプロジェクトを行うだけではなく、長期的にビジネスを考えウラン開発から空港建設、施設運営などより多面的に事業を拡げられていることが特に印象に残った。インタビュー前は日本企業が海外のインフラ設備を主体となって整備する意義が分からなかったが、親日国であるモンゴルにおいて日本のインフラ整備に対しての信頼が高いといった要因や、日本企業が主体となって行うことで今後の日系企業のモンゴル進出の足掛かりとなれる意義があるという自分自身では思いつかなかった考え方も知ることができた。一方インタビューを行う上で、質問者である自分自身の知識不足を感じる場面も少なくなかった。自分としては質問に臨む前には基礎知識を頭に入れたうえで行ったつもりであったが、観光開発と経済協力の線引きが自分自身の中で曖昧となっておりそれが表れた質問となってしまったものもあった。今後モンゴルの観光開発と経済協力を研究していく上で意識していくべき点であると感じ、より専門的な研究のためにも大切にしていきたいと思う。最後になりますがこの場を借りて、大変お忙しい中にもかかわらず快くインタビューをお受けいただいた浜島さんにお礼申し上げます。
筆者 古川