
取材相手のご紹介
清水邦俊さん
愛知県・名古屋市出身。明治大学進学後、個人経営の割烹料理屋にてアルバイトを行う。
その時の経験から自分の天職は料理人であると悟る。大学卒業後はそのまま料理の世界に飛び込む。
30歳を前に、好奇心から海外で日本料理を提供したいと志す。親しい知人の紹介で2006年11月より、モンゴル・ウランバートル市の日本料理レストランで料理長を務める。2021年現在は3店舗のレストランを経営する社長としてウランバールにてご活躍されている。
取材意図・目的
モンゴルの「労働」と「食文化」を知ること
取材内容
モンゴルの労働について
大きく2つの側面でお話をお伺いさせていただきました!モンゴルで労働するにあたっての「人」と「環境」についてです。
バックボーンが異なる人と働くわけなので、どんなところで苦労したのか。また、発展途上国特有の環境面で苦労したことがあるだろうと推測し、それらに焦点を当てて取材させていただきました!
ー 人の側面について
大きく分けて2つあったそうです。「言葉の壁」と「距離の取り方」だったそうです。
・言葉の壁について
海外では働く上で必ず出てくる問題ですよね!
最初の半年は通訳を雇って料理長として働いていたそうです。料理長という役職もあり、頻繁に部下のモンゴル人らとコミュニケーションを取る機会があります。そこで清水さんは「自分の考え・想い」を部下に半分も伝えきれていないと実感したそうです。
料理という繊細さが求められる仕事で、自分自身の考えを100%共有できないということは大問題だったそうです。そこで清水さんは決意しました。「自分の想い」を適切に部下に伝えるためには通訳を通じたコミュニケーション方法ではいけないと。モンゴルに訪れてから半年後、一からモンゴル語を学んだそうです。モンゴル語を習得後は、スムーズにコミュニケーションがとれるようになりました!ちなみにモンゴル語を習得するのに3-4年はかかったとか。やはりモンゴル語は他言語と比べて難しいですね。
・距離の取り方について
モンゴル人はいい意味で言うとフレンドリーで、悪く言うと土足で自身のパーソナルスペースに踏み込んでくる感じがすると表現されていました。とても分かりやすい言い回しですね!
モンゴルの文化として縦のつながり(上下関係)よりも横のつながり(フラット)の方が強いことが背景にあるとのこと。プライベートでは親しくできてうれしい反面、仕事中でも上下関係がなくマネジメント面する際に特に苦労したそうです。エピソードとして、清水さんが作成した料理レシピの工程を部下が勝手に変えてしまい、そのままオリジナル料理をお客様に提供してしまったことがあったとか。自分がお客さんだったらいつもと違う料理が出てきてびっくりしちゃいますね(笑)料理は繊細なものなので、料理長のレシピ通りに作ることが必須なのですが当初は指示に従ってくれなかったようです。そういった際は清水さんも厳しく部下を怒ります。しかし「注意する」という過程でも苦労されたことがありました。当初は日本の怒り方(上の意見は絶対だというような押さえつけの怒り方)をしていたが、それを行うと反発してくることがたびたびあったそうです。日本の料理業界は上下関係が厳しいので、清水さんは料理長の指示を聞かない部下に驚いたそうです。どうしたら自分の意見を素直に聞いてくれるだろうと悩む中で「相手を理解することの重要性」に気づきました。そこでモンゴル人の性格を知り、それに適した怒り方をするという工夫をして解決したそうです。モンゴル人の性格はプライドは高い反面素直でピュアなところがあると清水さんは言います。そこで学校教師のように諭すような言い方をするように心掛けました。これにより部下の素直な部分をくすぐることに成功し、話を聞いてもらえるようになったそうです!「相手に理解を示す姿勢」はマネジメントにおいて重要だということを取材を通して学ばさせていただきました!
―環境の側面
清水さんは日本料理を提供しているので、日本から材料を定期的に輸入しています。その過程で賄賂を求められることがしばしばあることがあるそうです。政府に輸入許可書など手続きすべきものはすべて網羅していても、税関でいちゃもんを付けられることがあったりするそうです。モンゴルでは日本と異なり「契約通り」にいくことがないこともあります。これはモンゴル限らず、発展途上国ではよくあることですね。
このようなビジネス環境下で上手くやり過ごすためには「根回し」が必要になるとおしゃっていました。しかし、清水さんは「裏を返せば、このような経験則からくるイニシアチブが必要な国でもあるので日本食レストランの参入障壁が高いところは競合他社が出現しにくため経営者的に見るとありがたいかも」と語っていました!不利な状況をポジティブに変換できる清水さんは素敵だなと取材をしていて感じました!
モンゴルの食生活について
元来モンゴルの食事は小麦、肉、根菜類であったため当初は日本料理が馴染みにくかったそうです。しかし、馴染まなかった大きな要因は食文化の壁というよりも経済の壁だったそうです。モンゴルで提供している日本料理は1回の食事で3000円ほどします。彼らの平均月収が40000円程度なので、このことからも日本食が高級料理であることが分かりますよね。実際に清水さんが経営しているお店に来店する客層はモンゴルの上位5%の層だとおしゃっていました。ただ、ここ数年でモンゴルの経済発展やSNSの普及により顧客層が拡大していと実感していると言います。現在はSNSの普及で日本料理がヘルシーでおいしいものとモンゴル人も認知しており、心理的障壁はほとんど無くなりつつあるそうです!
オススメの観光地
特になし(笑)とのこと。旅の醍醐味としてご当地グルメを食べることにあるが、モンゴルはどこに行っても同じ料理しかないからあまり行きたいと思えないと言っていました!
料理人らしい理由だと思いました!ちなみにテレルジには訪れたことがあるそうです。
清水さんのSNS紹介
▼ブログ
http://blog.livedoor.jp/kunitoshi_s/archives/cat_154588.html
▼Youtube
https://www.youtube.com/channel/UCXNG67LIgECHqRoO9AOe9Lw
筆者
町田